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高知発「風力発電と保安林」➅住民投票では決まらない

高知県本山町から香美市、大豊町にかけて計画されている大規模風力発電計画について、事業主体の電源開発株式会社側が地元地区の住民投票結果には従わない方針を住民側に表明した。2025(令和7)年6月の住民投票では「保安林解除に不同意」が過半数となり、事業がどうなるのか注目を集めていた。(依光隆明)

計画地近くにある保安林の看板。解除が難しいとされる「水源かん養保安林」が圧倒的に多い=高知県本山町

保安林解除には「不同意」

住民投票を行ったのは本山町の大石地区。風力発電そのものではなく、発電施設建設に伴う保安林解除について住民の意思を聞いた。議案名は「『高知県国見山周辺における風力発電事業』の保安林解除にかかる大石地区の同意について」。書面議決の方式で、投票権は各戸1票。配布の書面議決書に同意不同意を記入するやり方とした。地区69戸のうち67戸が署名議決書を提出し、「投票率」は97.1%。内訳は保安林解除に「同意する」が29、「同意しない」が37、無効が1。これによって大石地区は保安林解除に同意しないことを決めた。

保安林解除の可否を決めるのは農林水産大臣だが、決定の根拠は知事意見や市町村長意見に求められる。市町村長意見の基盤を構成するのは地区の意思なので、保安林解除の見通しは極めて危うくなっていた。計画予定地の多くは保安林指定されているので、保安林解除ができなければ計画は頓挫する。大石地区の議決直後、電源開発側の担当者は大石地区が出した結論を「ひっくりかえすようなことを考えているわけではない」と話していた。論理的に考えれば、大石地区を予定地から外す計画変更しか打つ手はない。電源開発側がどう出るか、計画に反対する住民グループはじりじりしながら電源開発のスタンスに注目していた。議決1年になろうとする2026年4月、住民団体がアクションを起こす。

尾根筋を西方から国見山に向かう登山道。自然林が多く、足元はふかふかだ=本山町と香美市の境界付近

住民の意思は関係ない?

電源開発株式会社は電力開発を担う国策会社として誕生した。民営化後は日本最大級の電力卸会社として存在感を見せている。「国見山風力発電事業」を手掛けるのは電源開発の完全子会社、ジェイウインド。2026年4月、ジェイウインドに対して「高知本山の風力発電と暮らしを考える会」(加藤和代表)や「全国再エネ問題連絡会」などが公開質問状を提出した。12項目の質問を連ねたが、その一つが大石地区の議決問題だった。文面はこうだ。

〈2025年5月本山町大石地区で行われた貴社説明会において、「6月に行われる大石地区の住民投票において反対が上回った場合に、この風力発電計画は中止になるのか」という質問に対して、貴社職員は「そうなると思う」と回答しました。その後、6月住民総会において反対が過半数となりました。計画が中止になったかも定かではありません。このことについてご説明下さい〉

5月、ジェイウインド社長名で示された回答はこうだった。

〈大石地区における住民投票結果については承知しております。一方で、本事業の取扱いについては関係法令、許認可手続、事業計画の内容及び今後の対応状況等を踏まえ判断されるべきものと認識しております。加えて、本計画については近隣地区含め関係する多くの方々から事業推進を求める声を頂戴しております。したがって、住民投票の結果のみをもって直ちに本事業の中止が決まるものではないと考えております。今後も、関係者のご意見を踏まえつつ、適切に対応してまいります〉

大石地区が可否を判断したのは保安林解除に同意するか否かであって風力発電計画自体の賛成反対ではない。ところが住民団体側の質問は風力発電計画自体の今後を問う内容だった。そのためか、電源開発側も計画自体について答えている。〈近隣地区含め関係する多くの方々から事業推進を求める声を頂戴し〉と書く中身は「保安林解除の推進を求める声」ではなく「風力発電事業の推進を求める声」だろう。片や住民投票の結果は「保安林解除に不同意」であり、風力発電事業への反対ではない。要するに保安林解除には反対でも風力発電計画には賛成、という住民がいてもおかしくはないのだ。そういう意味ではこの回答は大石地区の議決とはかみ合っていない。

この回答で唯一鮮明なのは、電源開発側が「住民投票の結果には従わない」態度を表したことだ。地元地区が保安林解除に同意しなくても計画は進めますよ、と読める。強気の背景には、おそらく国の姿勢がある。

西方から国見山方面を見る。この尾根筋に巨大風車が並ぶ=2026年4月、ドローンにより撮影

規制緩和という流れ

2025年3月、林野庁長官は新たな通達を発し、保安林解除に向けた関係者の位置づけを変えた。通達以前には〈直接の利害関係者等の同意の有無、地域住民の動向等を的確に把握の上〉という表現が入っていた。それが通達によって同年4月以降は〈直接の利害関係者等の意見、地域住民の動向等を的確に把握の上〉となった。利害関係者等の「同意」を利害関係者等の「意見」に変えたことになる。形としては、同意がなくても意見さえ把握すれば保安林解除が可能になった。

最終的な判断は農水大臣なので、事業者の思惑通りに進むわけではない。しかし規制緩和の波が保安林解除のハードルを下げ続けているのも事実。その線上に今回の回答があると言っても的外れではない。

それからもう一つ、保安林解除の手続きには大きな穴がある。その穴をついて、保安林解除とは関係なく現地では伐採が進んでいた。(つづく)

(C)News Kochi(ニュース高知)

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