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高知市とシダックス④責任者は高松にいた

シダックスが「高知市立龍馬の生まれたまち記念館」の指定管理に応募する条件は、高知市内に営業所を有することだった。2023年12月の市議会で、市は同館内にシダックスの営業所が存在すると説明した。営業所であれば「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」がいなければならない。市議会でそこを質された高知市は、「館長が配置されているから要件を満たす」という旨の答弁をした。その館長はすぐに辞めたではないか、と重ねて質問する議員に高知市がどう答えたか。(依光隆明)

「龍馬の生まれたまち記念館」の展示から

指定管理開始後3カ月で館長が退職

市の答弁は以下の通りだった。

「(館長は)やむを得ない事情により(2022年)6月下旬に退職の相談をしたうえで、同年7月9日付で退職されています」

シダックス大新東ヒューマンサービスが「龍馬の生まれたまち記念館」の指定管理をスタートしたのは2022年4月である。その3か月後に館長が正式退職していたことになる(実質的な退任日は不明)。議員の追及を大筋で認めた上で、市の答弁はこう続く。

「7月1日から8月末までの期間は、管理責任者として配置されています指定管理者の高松営業所職員が館長兼務として運営をサポートするとともに、同年9月1日に指定管理者の職員の配置転換により、後任館長が配置されています」

指定管理者の応募資格は「高知市内に営業所等を有する」であり、営業所等とは「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員が配置されたもの」となっている。市が依拠するガイドラインにも「(支社又は営業所等は)協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員が配置されたもの」と明記されている。つまりそのような幹部従業員が営業所に常駐する必要がある。ところが市の答弁からは「常駐」という要点が外されていた。

「高松営業所職員が館長兼務として運営をサポート」という言葉から推測されるのは、高松営業所職員に館長の肩書をつけただけ。高松営業所職員の館長が館に常駐していたのならはっきりとそう言えばいいのであって、「運営をサポート」などというまどろっこしい言い方はしない。仮に高松営業所員が館長の肩書を持っていたとしても、その人物が高松にいたら応募資格やガイドラインを満たしたことにはならない。

高知市とシダックスが交わした協定書

エリアマネージャーが管理責任者

当時、シダックスから報告を受けていたことも市は答弁で明らかにした。

「これらの運営体制につきましては、業務段階でのヒアリングや日常的な業務のやり取りの中で報告を受け、管理責任者の変更通知も提出されていましたことから、本市も把握していました」

ここで「管理責任者」という単語が出る。分かりにくいのはその位置づけである。12月議会で高知市は「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」が「館長」である旨を答弁した。では管理責任者とは何か。

情報公開請求で明らかになった資料にシダックス大新東ヒューマンサービスと高知市が交わした「高知市立龍馬の生まれたまち記念館の管理運営に関する基本協定書」がある。そこに「(シダックスが)業務上の管理をつかさどる管理責任者を定め、書面をもって(高知市に)通知する」というくだりがあった。さらにシダックス大新東ヒューマンサービスが高知市に提出した「龍馬が生まれたまち記念館事業計画書」には、管理責任者を同社のエリアマネージャーが務めることが明示されている。組織体制図によると、館長に指示・命令を下すのがエリアマネージャーであり、高知市との窓口もエリアマネージャーが務めることになっている。つまり館長ではなくエリアマネージャー(管理責任者)が「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」のように見えてしまう。

シダックスの事業計画書。中枢を担うのはエリアマネージャーとなっている

なぜ「二重構造」になっているのか

あれやこれやと書き連ねれば書き連ねるほど複雑になる。整理しておこう。

高知市の指定管理に応募する際、高知市外の業者は①指定管理の始期までに②高知市内に「営業所等」を設けなければならない。

シダックス大新東ヒューマンサービスは「始期まで」を「始期日を含む」と解釈し、指定管理がスタートする2022年4月1日に指定管理施設内に営業所を置くという奇策でこの2条件をクリアした。事前に相談を受けていた高知市はそれにOKを出した。2023年12月、市議会の本会議と総務委員会で「おかしいではないか」という声が上がる。議員の質問と執行部の答弁等によって「営業所等」の内実が次々と明らかになっていった。

「営業所等」の条件は「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員が配置されている」ことである。市は「館長」がその幹部従業員に当たると説明したが、館の業務を管理する管理責任者はシダックス大新東ヒューマンサービスのエリアマネージャーだった。この人物は館長の上司であり、高知市との窓口役にも就いている。

つまり実質的な責任者はエリアマネージャー(管理責任者)なのだが、高知市は館長を「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」だとみなしている。なぜこのような二重構造になるのか。理由として考えられるのはエリアマネージャーが高知に住んでいないからとしか考えられない。「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」は同館に常駐しなければならず、県外にいる幹部従業員はそれに当てはまらない。

見方を変えると、応募資格やガイドラインをクリアするために館長を「協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員」と見なした構図が浮き彫りになる。あくまで便宜上の責任者だから、館長が不在となっても大きな影響はない。

これ以降の市の答弁は、さらに驚くものだった。

市とシダックスが結んだ協定書から。業務を管理するのは管理責任者だと明記している。しかし「代理権を付与された従業員」はこの管理責任者ではない、と市は主張する

「代理権を付与された従業員」は求人募集で

シダックスの違反を追及する議員に対し、「不適当」な行為がなかった理由として市は以下のように答弁した。

「前館長の退職の報告を受けた際に、本市は早急な後任館長の配置について指導し、指定管理者はその指導を受け、当面の措置として管理責任者を館長兼務の任にあてるとともに、後任館長の求人募集を行うなど、できる限りの対応に努めていただきました」

シダックスに対して敬語を使うことにも違和感が漂うが、この答弁で分かるのは館長兼務の任にあてたのが管理責任者だったこと。館長兼務となったのは高松営業所の職員だから、高松営業所の職員が管理責任者、つまりエリアマネージャーだったことになる。管理責任者は県内ではなく、四国山地を越えた先にいた事実がこれで判明する。

後任館長を求人募集で埋めようとしたこともこの答弁で明らかとなった。「協定締結権限等一定の代理権」を持つ人間とは、営業所の中では営業所長と想像される。その人物がいなくなったら、普通の企業であれば人事異動で後任を充てる。ところがこの営業所は求人募集で探そうとしていた。高知市はそこに違和感を抱くのではなく、「できる限りの対応に努めていただきました」と敬語で称える。どこかおかしい。

「龍馬の生まれたまち記念館」の中

「最善を尽くしていただいたと認識」

続く答弁で、市は2カ月にわたって館長が不在だった事実を明らかにする。

「後任館長が配置されるまでの令和4年7月から8月末までの2か月間につきましては、管理責任者による兼務対応となり、専任としての館長はやむを得ない事情による不在となりましたが、その善後策として、指定管理者は9月1日付けで名古屋営業所職員を後任館長として配置しており、この間の求人募集や人事異動手続き、転居等に要する時間等を考慮しますと、法令等の違反があったとは考えられず、現場の運営スタッフをはじめ指定管理者は最善を尽くしていただいたものと認識しています」

この答弁から読み解けるのは①8月末までは館長不在だった。つまり高松営業所の職員は高知に来ないまま館長を兼務していた。②後任館長は名古屋の営業所職員で、9月1日付。③しかし実際の着任日(常駐し始めた日)は不鮮明。④館長不在について、市は「やむを得ない事情」と考えている。⑤「やむを得ない事情」の内容を市は明快にしていない。⑥館長不在について、市は「法令等の違反」があったと考えていない。⑦そればかりか「最善を尽くしていただいた」と評価している。

さっぱり分からないのは「求人募集や人事異動手続き、転居等に要する時間等」を考慮して「法令等の違反がない」と判断していることだ。当然ながら「法令等」にはガイドラインや応募資格も含まれる。館長が常駐しなければならないと定められているのに、不在だった。つまりガイドラインや応募資格に反している疑いがある。それなのに、求人募集などの時間を考慮して「最善を尽くしていただいた」とは…。(続く)

(C)News Kochi(ニュース高知)

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