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県発注工事で談合疑惑③本庁発注工事でも

情報公開制度で入手した資料を基に、高知県土木部の中枢・土木政策課が行った入札を検証してみよう。同課が行う入札は、土木事務所レベルの入札と比べて金額が大きいのが特徴だ。もう一つの特徴は、指名競争入札ではなく一般競争入札で行われること。「事後審査型」の注釈がついているが、これは落札者が応募資格を満たしているか否かを入札後に審査するだけ。一般競争入札なので応募資格さえ満たせばどんな業者でも参加できる。ならば入札参加業者は多いと思われそうだが…。(依光隆明)

高知県土木部にしたらこれが模範的正常入札だろう。11社が入札に参加し、全社が最低制限価格の札を入れてくじびきをした

最低制限価格の11社で電子くじ引き

確かに多数の業者が参加する入札は多い。

上の写真は南国市に発して浦戸湾に注ぐ下田川関係の入札記録である。工事現場は高知市五台山。

この記録から次のことが分かる。①2022(平成4)年6月24日に県が予定価格1億7937万円、最低制限価格1億6446万円の工事を一般競争入札にかけた。②12社が入札に参加した。③うち11社は最低制限価格で札を入れ、1社は最低制限価格を1万円上回る価格の札を入れた。④最低制限価格の札を入れた11社でくじ引きを行い、1社が落札者に決まった。⑤入札は電子入札で行われた。つまりくじ引きも電子くじで行われた。

最低制限価格での11社くじ引きなんて、業者にとっては歓迎すべきものではないだろう。最低制限価格を割り出すだけでも労力とカネがかかる。たとえば1万円オーバーの札を入れた社は計算間違いをした可能性もある。手間をかけて算出し、受注のため最低価格で札を入れたところで受注確率は11分の1。となると事業計画の見通しも立てにくい。が、発注者にすれば多数による最低制限価格での電子くじ引きは好ましい。工事費を圧縮できるし、不正がないことを分かりやすく県民に説明できる。

これも最低制限でくじ引き。正常な入札だと思われる

必要なのは「一点の曇りもない」ことだが…

上の写真は2022(令和4)年3月に行われた同様の入札記録。こちらは予定価格が2億8463万円、最低制限価格が2億5734万円とやや高い。入札に参加したのは2つの共同企業体。ともに最低制限価格で札を入れ、くじ引きで落札者を選んでいた。

入札参加者は少ないものの、最低制限価格でのくじ引きだからこれも正常な入札だと説明できる。

2022年に起きた地質業者による過去の談合発覚で、県土木部は極めて厳しいスタンスをとった。濱田省司知事は「厳正な処分」と声を上げ、言葉通り厳しい処分を科した。建設会社に比べると地質業者は所帯が小さい。小さな業者は事業の継続さえ懸念されるほどの影響を受けた。県がそれほど厳しい処分を科したのは、すべての談合を一切許容しないという決意表明だろう。前提として欠かせないのは、県自身に一点の曇りもないことである。

これまでに見てきたように(「談合疑惑」①②)、県の出先(土木事務所)が発注する工事では談合が疑われるケースが少なくなかった。疑いは疑いの域を出ないものの、知事発言の歯切れよさを考えると違和感はぬぐえない。仮に本庁発注の工事でそのようなことがあったら県に対する信頼は根底から揺らぐのだが…。

2022年の入札記録。入札に参加した業者は1社だけだった

5億円の工事で一者入札・落札率99.7%

上の写真は2022(令和4)年8月に県土木部土木政策課が行った県道工事の入札記録である。場所は高知市春野町。

予定価格は4億8161万円で、最低制限価格が4億3884万円。札を入れたのは1社しかおらず、その業者が上限額(予定価格)に近い4億8000万円で落札している。落札価格を予定価格で割った落札率は99.67%。施工可能な業者が少なかったのかもしれないが、それにしても応札が1社のみ、しかもほぼ上限額で落札していることに違和感は残る。この入札記録を見て、高知市のある業者はこう話した。「この工事を本当に取りたかったらこんな高い価格で札を入れることはない。どこかがちょっと低い価格で札を入れてしまったら取れないから。要するに、(業者間で)話がついていたということだろ」

1社しか入札に参加しないということは、発注に問題があったと見ることもできる。当然ながら発注者側が問題を自覚していたら一者入札(共同企業体もあるので、正式には一者入札と呼ぶケースが多い)が繰り返されることはない。

2020年の入札記録。入札に参加したのは1社だけ

2022年の入札記録。入札に参加したのは1社だけ

土木政策課発注の4分の1超が1者入札だった!

2020(令和2)年9月と2022(令和4)年7月に行われた上2つの入札も一者入札で、落札率はそれぞれ98.52%と97.46%。

県の開示資料によると、2020(令和2)年4月から2023(令和5)年3月までに県土木政策課は66件の入札(いずれも一般競争入札)を行っている。うち一者入札だったのは17件(25.8%)。つまり全66件の4分の1超が一者入札だった。たとえば2022(令和4)年7月6日には2件の入札を行っているが、2件とも一者入札。2023(令和5)年3月8日も2件中2件が一者入札で、しかも2件とも同じ業者だった。一者入札の17件を受注金額で見ると、最も低いのは1億2100万円、最も高いのは19億円。

高知県では2010(令和22)年の土木部長通知によって指名競争入札では一者入札は中止とされている。理由は「入札参加者を公募する一般競争入札とは異なり競争性が必ずしも確保されていない」ため。一般競争入札に競争性がきちんと確保されているなら、一者入札が頻繁に起こるはずはない。

しかも前回までに見たように、指名競争入札(各土木事務所が実施)でも一者入札は続いている。これは県自らが「一般競争入札による競争入札と同等レベルの競争性が確保されていると判断される場合には、有効な入札として取扱い入札を続行できる」などの抜け穴を作っているからだ。

今のやり方で全く問題ないというスタンスを県が変えない以上、談合の疑いを持たれかねない入札は今後も続く。(いったん終わり)

 

(C)News Kochi(ニュース高知)

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