教育

仲本工事さん妻・三代純歌さん(高知市出身)が週刊3誌を提訴。これ以上の被害防ぐため、「一石投じたい」

2022年10月に交通事故で亡くなったドリフターズの仲本工事さん(享年81)の妻だった高知市出身の歌手、三代純歌さん(55)が2月27日、虚偽の報道で名誉を棄損されたとして週刊誌3誌(「週刊新潮」「女性自身」「週刊女性」)を提訴した。提訴後、東京高等裁判所内の「司法記者クラブ」で記者会見した純歌さんは「捏造」という言葉を使って3誌を批判。夫が亡くなるという悲しみと不安の中、意図的な捏造記事によって追い込まれ、自殺まで考えたことを明かした。(依光隆明)

三代純歌さんの記者会見。記者約30人が出席した(2024年2月27日)

「週刊新潮」の報道がきっかけで事故に

母親が歌手だったこともあり、純歌さんは3歳のときから人前で歌っていた。テレビ高知の「歌って走ってキャラバンバン」には毎回のように出場。長じてボイストレーニングを受け、その先生から「三代純歌」という名をつけてもらった。地元タレントとしてずっと高知で活動していたが、31歳のときに高知で公演をした仲本工事さんと知り合って運命が急転。東京に出て、やがて仲本さんと結婚(事実婚)した。

東京・目黒区で仲本さんと一緒に居酒屋とスナックを経営。併せて二人で歌手活動を行っていたが、2020年以降の新型コロナウイルス禍で経営状態が急落。縁ができた横浜市でカレー屋を開いたところ、突然「週刊新潮」が「老人虐待」や「モンスター妻」などと純歌さんを大々的にバッシングした。2022年10月半ばのことだった。

仲本さんが交通事故に遭ったのは「週刊新潮」が出た5日後。「(横浜の)自宅の周りを週刊誌がウロウロしてる」と聞いた仲本さんが「俺が行って言ってやるよ。純歌は何も言うな」と純歌さんの家に来る途中のことだった。仲本さんの死後もバッシングは続いた。頼りとする夫がいなくなり、事務所にも所属していなかったため、純歌さんに週刊誌と戦うすべはない。つまり週刊誌側から見れば、純歌さんは叩いても全くリスクのない人物だった。売れると見れば叩くだけ叩き、話題性がなくなると別の対象へと去った。

喜田村洋一弁護士。名誉棄損訴訟では日本屈指の理論家でもある

「もう失うものはなにもない」

週刊誌が火をつけたことでネットの書き込みには純歌さんへの攻撃があふれた。純歌さんは「周りのみんなが自分を見る。指をさして責める」「この世には居場所がない」という感覚に陥った。純歌さんは死を考えながら過ごし、友人たちの助けで死を免れる。「もう失うものはない」と決意して踏み出したのが週刊誌を訴えることだった。といっても個人が巨大出版社を訴えるのは簡単ではない。まして世間に広まった誤解を解くのは難しい。打開のきっかけは、名誉棄損訴訟では日本でもトップクラスの実績と理論を持つ喜田村洋一弁護士が代理人を引き受けてくれたことだった。喜田村弁護士は自由人権協会の代表理事であり、メディアや報道の自由に詳しい。刑事弁護を中心に数々の重要な事件で代理人を務め、ジャニー喜多川氏の性加害を法廷で認めさせたことでも知られている。

記者からは次々と質問が飛んだ

ウエブサイトは月間1億PV

提訴後の会見には純歌さんと喜田村弁護士が並んだ。喜田村氏は「(3誌が記事に書いた内容は)虚偽、嘘、存在しない」という表現で真実相当性を完全否定した。純歌さんは「収益のために(作りごとを)書くのかと思うと本当に週刊誌は許せない」と訴え、こう振り返った。

「当時は『死にたい』というより『生きたくない、生きる自信がない』という気持ちだった。人前に出ることもできないし、日本中のみんなが私のことを指さして鬼のように思っている。お金もなく、毎日一時間おきくらいに目が覚めて、でももうどうしようもなかった。提訴までたどり着けるなんて思ってもいなかった。本当にうれしい」

週刊誌は出版不況の中にあるが、各誌ウエブサイトは右肩上がりに伸びている。「週刊新潮」「女性自身」「週刊女性」ともウエブサイトは月間1億PVを突破。社会に与える影響は、おそらく週刊誌本体を圧倒する。各誌ウエブサイトで「モンスター妻」「鬼妻」とさらされ続けたことに対し、会見で純歌さんはこう問いかけた。「月間1億PVあるウエブサイトで(悪評を)拡散されたら私はどんな女だと思われますか?」

提訴に至るまで、純歌さんがたびたび口にしたのは「一石を投じたい」という思いだった。「週刊誌やネットが一人の人間を追い込むなんて簡単なこと。こういう被害がこれからもあってはいけない。こんなことを未来に残してはいけない」。売れんがために週刊誌がでたらめを書き、それをネットが増幅する。そのことによって弱い個人が追い込まれ、中には自殺する人も出る。そんな集団いじめ的構図に一石を投じたかった、という思いだ。記者会見でもそのことを淡々と述べた。

喜田村弁護士と並んで質問に答えた

3誌同時に同じ嘘?

請求額は新潮社に2200万円、「女性自身」の光文社に4400万円、「週刊女性」を発行する主婦と生活社に1650万円。ほかの週刊誌もバッシングに加わったが、「この3誌が最もひどい」として提訴した。会見で純歌さんは、特に加藤茶さんの発言(仲本さんの病室前で純歌さんに『お前のせいだ』と怒鳴った)をめぐる3誌の報道を挙げた。「全くの捏造。それが3誌にほぼ同時に載った」と指摘。「嘘の話が3誌に同時に載るなんておかしい」と週刊誌同士の「談合疑惑」も口にした。

(C)News Kochi(ニュース高知)

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