高知県在住のAさんが行政不服審査の裁決取り消しを求めて県を提訴した行政不服審査裁決取消請求事件の判決が2026年1月23日、高知地方裁判所で下された。Aさんが問うたのは裁決の違法性だったが、判決はそこに踏み込まなかった。(依光隆明)

高知地方裁判所
違法性の立証に努めたが…
提訴日は2025年4月14日で、被告は高知県。代表者は高知県教育委員会(代表者は教育長)だった。Aさんが提訴に踏み切ったのは、行政不服審査の裁決が法に則っていないと判断したため。行政不服審査という行政の過ちを審査する手続きがでたらめであってはいけない、県は違法性を認めて真摯に反省するべきだ、とAさんは考えた。裁判にあたっては裁決の問題点、さらには違法性の立証に重点を置いたのだが…。
ざっくりとこれまでの経緯を。
➀Aさんが県教委に文書の情報公開請求➁県教委は該当文書を「非開示処分」とする③納得できないAさんは2024年初め(令和5年度末)に県へ行政不服審査を申し立て③行政不服審査は処分(今回は非開示処分)を出した「処分庁」を庁内の「審査庁」が審査するが、規定によってAさんの件は審査庁も処分庁も県教委だった④2024年10月審査庁(県教委)はAさんに結論=裁決書を出す⑤裁決はAさんの主張を認めていたが、裁決書の文面には多々不備があった⑥調べると、県教委は非開示処分を下した処分庁の担当を行政不服審査(審査庁)の担当にしていた。つまり非開示処分を下した担当と、処分の妥当性を審査する担当が同一人物だった⑦これは法律に違反する疑いが強い――。
手続きがでたらめ、違法ではないかと提訴したAさんに対し、高知地裁(佐々木隆憲裁判長、奥野佑麻、徳舛純一裁判官)は門前払いの判決を下した。Aさんの敗訴だった。

判決から。原告の目的は文書の開示だったはず。裁決によって文書は開示されているので、裁決を取り消す訴えの利益はない。という論法によって門前払いされた
「訴えの利益はない」
判決文によると、裁判所が争点としたのは㋐訴えの利益があるか㋑採決の違法性――の2点。まず問題としたのは㋐だった。
裁判所の見解を順に見てみる。
〈裁決の取消しを求める訴えの目的も、究極的には現処分の取消しを求めることにあると解される。そうすると、原処分の取消しを求める法律上の利益が消滅した場合には、裁決の取消しを求める訴えの利益はないと解するのが相当である〉
最初にさらりと書いているが、ここが要点だといえる。Aさんは裁決の違法性を問うたのに対し、裁判所は裁決の結論に論点を絞っている。要するに「裁決の結論がAさんの望み通りだったら訴える利益はないじゃないか」ということだ。ちなみに「裁決」というのは行政不服審査の結果。裁決に疑問を持ったAさんが求めているのが裁判所の「判決」。
判決文は、〈(裁決は)原告が本件説明文書開示請求において求めたものに沿う結論となっている〉と指摘し、〈原告の本件説明文書開示請求における目的は達成されているのであるから、原処分である条件不存在決定の取消しを求める法律上の利益はもはや消滅していることが明らかであって、本件裁決の取消しを求める訴えの利益はない〉と結論付けた。Aさんの望み通りの裁決が出ているのだから、そもそも提訴する資格がないということだ。判決はAさんの提訴を〈不適法であるからこれを却下〉とした。
違法性を糺したいというAさんの主張は、論議の入り口にも入らないまま門前払いされたことになる。門前払いするのなら裁判官3人が9カ月もかけて判決を練る必要はない。ひょっとして3人の裁判官の中で何らかの議論があったのかもしれないが、分からない。

高知県教育委員会が入る県西庁舎(高知市丸の内1丁目)
誰が行政をチェックする?
判決について、Aさんは「法の支配と三権分立という民主主義の原則から見て問題がある」と指摘し、こう続ける。
「本件事案では、行政手続きが法律に違反していることが明らかで、原告(Aさんのこと)は行政の行為により権利利益を侵害していることを具体的に提示し主張しました。この法律違反を放置すれば原告以外の第三者にも同様の権利利益の侵害の継続することとなります」
準備書面において、Aさんは行政手続きの法律違反を具体的に挙げた。裁判所は9カ月かけながらそこには全く触れず、Aさんを敗訴させた。Aさんが懸念するのは、最後の砦である裁判所が行政の違法行為をチェックしなければ行政が野放図になってしまうということだ。Aさんが指摘する。
「法の支配の原則により、行政行為が成立するためには主体、内容、手続、形式のすべてが適法かつ正当に行われることが必要です。原告は、被告の行政行為が成立していないことを主体から形式までのすべてについて検証し、違法性を主張しました。しかし裁判所は、この行政行為について判断をしていません」(つづく)

















