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高知県の行政不服審査を検証する⑪あれは私文書だった

高知県在住のAさんが行政不服審査の裁決取り消しを求めて県を提訴、高松高裁で争いを続ける行政不服審査裁決取消請求事件で、情報公開請求に基づいて開示された公文書に改ざんが加えられていたとAさんは指摘した。これに対し、県は5月7日付の控訴答弁書で文書に手を加えたことを認め、「公文書ではなく私文書だった」という論理で正当性を主張している。(依光隆明)

県が高松高裁に出した控訴答弁書。弁護士に加え、指定代理人が9人名を連ねている

本人訴訟に弁護士+指定代理人9人

この裁判をAさんは弁護士なしの本人訴訟で争っている。県は代理人の弁護士1人を立て、ほかに指定代理人として県教育委員会の課長、課長補佐、チーフクラスの9人を充てた。これは異例と言っていいほどに多い。しかも県は一審でその主張を認められ、いわば相手を門前払いにして快勝している。相手は普通の一県民であり、おまけに本人訴訟だ。普通に考えればさほどの力を入れる必要もない。

なぜこれほどの陣容が必要なのか、という理由の一端は5月7日付の県側控訴答弁書から伝わってくる。論理が破綻というか、少なくとも明快ではないのだ。

おさらいすると、この問題はAさんが県に情報公開請求したことに端を発している。Aさんが開示を求めた原本の文書を仮に「12月文書」とする。2023年12月25日に学校長が読み上げた文書だからだ。情報公開請求、非開示決定、行政不服審査申し立てと進んだ翌年3月8日、県教委側はこの文書をAさんに渡して行政不服審査の取り下げを求めた。少なくともAさんはそう受け止めている。いずれにしろこの段階で「12月文書」を受け取ったとAさんは認識した。3月に受け取ったこの文書を仮に「3月文書」とする。行政不服審査を経て文書が開示されたのは10月。ここでAさんは「10月文書」を受け取る。Aさんは原本の「12月文書」を3月にももらい、10月にももらったことになる。当然、この3つの文書はイコールのはずだ。ところが「3月文書」と「10月文書」が違っていた。

県の控訴答弁書より。「私文書として提供」と説明している

私文書として提供した」

裁判では「3月文書」は甲第57号証、「10月文書」は甲第58号証として証拠採用されている。県側の控訴答弁書は、両文書の相違を認めた上で以下の旨を説明した。

➀甲第58号証(「10月文書」)が真正の校長説明文書、つまり「12月文書」である。②甲第57号証(「3月文書」)は校長が私文書として提供を行った文書である。③Aさんに提供する際、校長が一部を修正していた。

➁と➂の部分、控訴答弁書はこう書いている。〈今後の話し合いをより丁寧に行うことを目的として、令和6年3月8日に、学校長が私文書としての提供を行った文書である。その提供に際し、学校長が一部修正を行っていたことから、それぞれの文書において相違が生じているものである〉

この文章は支離滅裂に近い。なにより重要なのは突然「私文書」が登場した点だ。私文書であれば、何を書こうと、何が書かれていようと県教委に責任はない。ところが「私文書だ」と突き放していながら〈一部修正〉とわざわざ注釈を入れている。そもそもAさんは公文書だと信じて受け取っている。仮に渡された私文書が1から10まででたらめであっても公文書と信じて受け取った。そう信じるしかない状況で県教委側から渡されているから当然だ。私文書でありながら〈一部修正〉と書き入れたのは、裁判所に対する印象操作に他ならない。真正の公文書を一部修正しただけですよ、全体としては意味が変わっていないから問題ありませんよ、と。要するに、必死で焦点のすり替えを図っている。

情報公開請求に基づいて開示すべきは真正の公文書であって、それに手を加えたもの(改ざんしたもの)を開示するのは明確な犯罪だ。一部修正も全面修正も関係ない。文意は一緒だから問題ない、と行政が言った時点で情報公開制度は崩壊する。改ざんが犯罪なのだから、改ざんした文書は私文書とするしかない。つまり、控訴答弁書は「3月文書」を私文書とするしかないところから出発している。だから論理がほぼ破綻している。

高知市大原町にある県の「心の教育センター」=Google Earthより

公的説明文書は公文書

私文書が渡されたときの状況をおさらいする。Aさんによると、日時は2024(令和6)年3月8日、場所は高知市大原町の心の教育センター体育館。呼ばれて足を運ぶと、校長と教頭、生徒指導担当教諭、県教委事務局職員が出席していた。県教委職員は会の冒頭にこう言った。「校長説明文書を渡すから審査請求書を返却する」。情報公開請求通りに校長説明文書(「12月文書」のこと)を開示するから行政不服審査は取り下げろ、ということだ。当然、渡された文書(「3月文書」)が「12月文書」だとAさんは信じた。ところが文書の相違が明らかになると、県は「渡したのは私文書だった」と主張し始めた。情報公開請求した公文書だと錯覚させて私文書を渡していた、という図式になる。これは詐欺に近い。

3月8日は平日の金曜日なので、日時と場所、メンバーを考えると私的な会合のはずはない。では民間人を公的な会合に呼び出し、公文書を装って私文書を渡したのか。どう考えても疑問符しか浮かばない。そもそも公的な会合で渡した説明文書は公文書と見なされるのではないだろうか。通常、公的な場で使われた説明文書は情報公開請求の対象になる。黒塗り部分があるにしろ、公文書として扱われ、多くは全面開示または部分開示となる。つまり公的な会合の説明文書が私文書という主張自体が成立し難い。「校長説明文書を渡すから審査請求書を返却する」という県教委側の発言も極めて重要だ。「そのようなことは誰も言っていない」と主張するつもりだろうか。そんな主張をしたあとで録音データが出てきたらどう釈明するのだろう。(つづく)

(C)News Kochi(ニュース高知)

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