シリーズ

高知市とシダックス③「ガイドラインの要件」って?

シダックスは指定管理を始める日に指定管理施設に営業所を作った、だから何の問題もない。と突っぱねる高知市の主張について、2023年12月の高知市議会ではその根拠の一端が明らかになった。 (依光隆明)

「龍馬の生まれたまち記念館」の展示から

税務への届け出文書で営業所を確認

高知市議会には代表質問と個人質問があり、後者は総括的な質問と一問一答の2種類に分かれている。つまり質問の種類は3種類。執行部側は質問に添って答弁を準備し、文書化する。とりあえずその答弁文書に添って高知市の主張を見ていこう。

シダックス大新東ヒューマンサービスは2022年4月1日から「龍馬の生まれたまち記念館」の指定管理を任されている。資格条件は「指定管理期間の始期までに」「高知市に営業所を有すること」。ところが高知市民がどう調べても同社に高知営業所はない。問い合わせた市議に対し、同社本社も「高知県内には営業所はない」と明言している。外形的に営業所がないという現実に対し、高知市の執行部はこう答弁した。

「令和4年(2022年)3月23日付けの『高知市龍馬の生まれたまち記念館の管理運営に関する基本協定書』を本市と指定管理者が締結するにあたりまして、指定管理者から高知県及び本市の法人関係税を所管する部署に、営業所を設置する旨の届出書が提出されていることを確認しています」

「当届出書では、営業所の場所は、龍馬の生まれたまち記念館と同じ所在地、設置日は、指定管理期間の始期となる令和4年4月1日となっており、いずれも『高知市指定管理者選定手続ガイドライン』の要件を満たすものです」

要するに、①県市の税務当局に営業所設置届けが出ていることをもって営業所が設置されたと認めた②設置場所は指定管理施設であり、設置日は指定管理がスタートする日である③これは高知市のガイドラインを満たしている。

以上によって「全く問題はない」というのが高知市の公式見解なのだが…。

高知市指定管理者選定手続ガイドライン

ホームページにもない内輪の文書?

議員の疑問は外形的に営業所が存在しないということだ。ホームページを見ても、当のシダックス大新東ヒューマンサービスに議員が問い合わせても高知県内に営業所はない。だからこそ質問したのだが、それに対する市の答弁は「営業所の設置届けが出ている。だから営業所は存在する」。当然ながらこれは真摯な答弁になっていない。市民や議員が聞きたいのはシダックスの営業所が実際にあるかどうか(正確には「ないではないか」という追及)であって、ペーパー営業所や幽霊営業所でOKだとは誰も思っていないのだ。市が存在を主張するシダックスの営業所なるものは市役所から歩いて10分の「龍馬の生まれたまち記念館」内にあるらしい。足を運んで看板を見、そこにいるであろうシダックスの幹部社員に実態を聞けばいいのだが、市はそれを避けている。

③はレトリック(巧言)に近い。ガイドラインを持ち出したのは発言を権威付けするためだろうが、ガイドラインには「始期まで」に始期の当日(シダックスの場合は4月1日)が含まれるとは全く書いていない。しかもガイドラインは市内部で決めた申し合わせであって、市のホームページにも載せられていない。つまり市民の目に触れるものではない。

ちなみに届出書を確認した方法は答弁文書への注釈で市自ら明らかにしている。

(営業所等の設置については、県、市法人関係税所管部署への設置届出書の写しが、指定管理者から提出されており、基本協定書締結までの令和4年3月、2月に各届出されていることを確認済)

市の税務当局に出した届出書のコピーが2月に、県の税務当局の分が3月にシダックスから市へ提出されたということだろう。

龍馬の生まれたまち記念館の指定管理者応募資格条項

「責任者となる館長が配置されており、要件は満たす」

幽霊営業所ではなく実体を伴うかどうかの指標として、市は基準を明文化している。応募資格にあるのは、「(支社又は営業所等は)協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員が配置されたものをいいます」。ガイドラインも同じ。「(支社又は営業所等は)協定締結権限等一定の代理権を付与されている従業員が配置されたものをいう」

市役所と協定を結ぶ代理権を持つ幹部職員が高知のシダックス営業所にいるのかどうか。議員側は当然、これも市に質した。当初、市の答弁は以下の通りだった。

「龍馬の生まれたまち記念館におきましては、現指定管理者が業務を開始した令和4年4月1日から、事務部門と学芸部門を統括し、日常的な業務のほか、事故等の緊急時対応の責任者となる館長が配置されており、要件は満たすものと考えます」

協定締結権限を持つ幹部職員が館長であると市役所は説明した。周辺取材で分かったことだが、その館長は高知県内でシダックスが雇っていた。協定締結権限を有する幹部としてシダックスが雇用したことになる。

市の答弁に対し、議員側は「4月に任命された館長は1カ月で退任し、3カ月間は館長不在だったことを知っているか」と質した。「龍馬の生まれたまち記念館」は龍馬生誕地の近くに立つ龍馬ファンの聖地の一つ。坂本龍馬を生んだ高知市の象徴でもある。その館長が不在だったことは、知る人ぞ知る事実だった。

館長問題をめぐる市の答弁は、再び聞く人を驚かせた。(続く)

「龍馬の生まれたまち記念館」の展示から

 

(C)News Kochi(ニュース高知)

関連記事

  1. 60年前にタイムスリップ。高知県安田町、日本一昭和な映画館
  2. 県発注工事で談合疑惑②知事「運用に問題はない」
  3. 高知の土木業者が能登半島地震に遭って感じた違和感
  4. 高知市とシダックス④責任者は高松にいた
  5. ひと 棚田の物語を伝える写真家 河野豊さん
  6. 16歳アイドルの自死、そして報道被害
  7. 災禍の中から一筋の光 「こつも炭丸」の物語
  8. ひと。ハンセン病から福島を語る木村真三さん

ピックアップ記事







PAGE TOP