秋田といえば、何が思い浮かぶだろうか。きりたんぽ、あきたこまち、雪国、学力上位県……。筆者が思い浮かぶのはこの程度だが、実のところ、これらのイメージは秋田の表層でしかない。
「秋田は日本の未来である」。本書の著者であり記者の工藤哲氏は、少子高齢化が加速する秋田をそう表している。本書は工藤氏自身の取材を元に、秋田の文化や環境、人柄などについて触れながら、人口減少の原因や減少により発生する問題についてまとめている。(インターンシップ研修生、来川光輝)

地方は『国の足腰』
「仮に日本の国を一人の『人』にたとえれば、大都市は『顔』であり、その顔を支え、人材や食べ物を供給し続けている地方の存在は、いわば『国の足腰』にあたる。」(「はじめに」より)
人々の注目を集めるのはやはり「顔」だが、重要なのは末端だ。支えである足腰が弱れば身体全てに影響が及ぶ。衰弱する地方の現状を改善しなくては、日本の将来も先細りだろう。
高知も少子高齢化に蝕まれた、国を支える足腰の一つだ。秋田の事例は他人事ではない。だからこそ著者の「秋田の現状を伝えたい」「地方へ目を向けるきっかけになってほしい」という思いが突き刺さり、襟を正して本書を読んだ。
4章で記す秋田の現状
本書は4つの章で構成されている。医療や交通、経済など少子高齢化が秋田に及ぼしている影響についてまとめた1章、人口減少により被害が拡大しているクマ害について書かれた2章、豊かな食文化に潜む健康問題を提起した3章、観光地の発掘に希望を見出す4章だ。
章の中でも細かく項目が分かれているため読みやすく、輪郭をなぞるように秋田のリアルな実情が伝わってきた。他県にそのまま流用できる改善策が述べられているのではなく「秋田では既にこのような問題が発生していて、少子高齢化が進むとより悪化します」とこちらに危機感を持たせる事例が多数紹介されており、読み進めるほどに「このままではマズい」と焦燥に駆られる。

また、県民による性別や世代の差異を理由とした対立や認識の歪み、さらに他県への見下しが滲んだ話もあり「最早どうしようもないのでは?」と度々思わされた。しかしながら、工藤氏が淡々と問題点を指摘し、また時折秋田の食文化や観光地などの魅力を伝えているため、第三者の視点を借りる形で読むことができた。
「高齢者への敬愛」が秋田を救う?
全編を通して最も印象に残ったのは、1章の序盤に始まる、仙北市と市議会の対立だ。
財政難を理由とした「八〇歳祝い金」制度の廃止をめぐる対立であり、廃止を提案した市側は「少子化対策への充当」に回すと説明したが、市議会側の反発が強く、提案は否決となった。簡単に要約すればよくあるやり取りのように感じるが、著者によるベテラン市議への取材内容を読むと印象が変わる。

「財政難のなか、なぜ廃止案を承認しなかったのか」という質問に対し市議は、市の予算の中で散見される他の不要な支出を見直せば良い、と指摘した上で「人生の先輩や高齢者への思いやり、敬愛の気持ちをもって努力すれば捻出できる」と答えたのだ。前半の意見はともかく「敬愛の気持ちをもって〜」というのは具体性に欠けており、少々引っかかる。
またベテラン市議は、本件の是非について市民の声を聞いたと言う。確かに、市議は市民の代表なのだから、意見を聞くことは大切なことだ。
しかしその様子がおかしい。老人クラブの関係者から挙がった多数の反対意見に加え、若者からも「祝ってあげたらいいのでは」との声があったことが否決につながった。と、市民の声に素直に従った結果のように言うものの「5000円くらいなら貰わなくていい」という賛成意見に対しては、市議自ら「だが5000円くらいなら今まで通り享受してもいいのではないか」と反論している。この市議は元から廃止案を否決するつもりで、自身に都合の良い意見だけ吸い上げたのではないか?と感じた。
認知の歪み、無知の危険
本書では、先述の「敬愛の気持ち」の下りの他にも、違和感を覚える発言が散見されたが、全章を読んだ後で「敬愛の気持ち」の項目を読み返すと、「もしかして本気で『高齢者への敬愛の気持ちがあれば予算も少子化もなんとかなる』と思っているのでは?」と思い至った。自分が知らないだけで、高知の議会もそう変わりないのではないかと恐ろしくなった。
グループワークに適した本
本書は、中学・高校でのグループディスカッションや、大学のフィールドワークに用いるのに適していると感じた。
秋田は日本の将来を体現している。日本で暮らす全員が、人口減少やそれに派生した課題の当事者であるのだ。この一冊を読んでおしまい、ではなく「秋田の事例と比較して、自分の地域はどうだろう?」と繋げることこそが重要であり、本書は読者にそのような危機感や当事者意識を持たせる力がある。

もちろん上の世代にも読んでもらいたい。本書では世代間の歪な対立構造が顕著に現れていたが、これらの問題に立ち向かうには、「自分は関係ない」と目を背けたり「自分たちが苦労した分若者も苦しむべき」と負の連鎖を生んだりするのではなく、地域の一員として皆が手を取り合い、未来の世代のためにも今を改善しようとする意志が必要だ。
実情は厳しいが、目を逸らしたって解決しない。自分ごととして向き合うことが肝要だと、そう教えてくれる本だった。













の池田さんら。沖には白い山脈のように津波が迫る=2011年3月11日(提供写真)-1-150x150.jpg)




