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高知市とシダックス⑤社員も知らぬ営業所?

「高知市立龍馬の生まれたまち記念館」(高知市上町2丁目)の指定管理を受託したシダックス大新東ヒューマンサービス(本社東京)は、そもそも応募資格を満たしていないのではないか。疑惑を追及する議員に対し、高知市は議会答弁で同社への配慮を見せた。その姿勢から「高知市がシダックスを誘致したのではないか」という声も出たのだが…。シダックスに質問をぶつけると、希望期限内に回答が送られてきた。(依光隆明)

「龍馬の生まれたまち記念館」のホームページ

高知市からの誘致はありません」

シダックス株式会社広報室名で回答がきたのは2024年2月16日午後7時半だった。「龍馬の生まれたまち記念館」の指定管理に応募する際、高知市からアプローチがあったか否か、回答は明快だった。回答文は「応募資格条件をクリアするためのご相談・協議を事前に高知市としたことはありません」「高知市からの誘致はありません」。つまりシダックスが自社の判断で応募し、高知市と相談したことはないことを明らかにした。

県外企業の応募条件をおさらいすると、「申請資格」として「高知市に本社、本店、支社又は営業所を設置していること」と明記されている。申請時点で同社は高知県内に営業所を持たなかったが、この申請資格には「指定管理期間の始期までに作ればいい」とも添えられていた。指定管理期間は2022年4月1日から3年間。シダックスはこの条項を、指定管理開始日の4月1日に指定管理施設である「龍馬の生まれたまち記念館」へ営業所を置くという奇策によってクリアしたことになっている。2023年12月になってそれが判明したとき、議員の一部は「応募資格を満たしたことになっていない」と声を上げ、市側は「全く問題ない」という答弁を繰り返した。

シダックスの回答は、この奇策をシダックス自体が編み出したことを示している。

「龍馬の生まれたまち記念館」の展示から

指定管理施設への設置、高知市が事前OK

ただし不意討ちのようにこの奇策を用いたわけではない。シダックス広報室の回答文には、指定管理施設への営業所設置については高知市が了解済みだったことも書かれていた。

シダックスの回答文はこうだ。「令和3年(2021年)8月 10日の高知市観光振興課からの公募内容に関する質問の回答12によって可と知りました」。これはどういう意味か。

指定管理に応募しようとする団体は、事前に文書による質問を許されている。質問と回答は公にされ、質問者は伏せられる。回答12に至る質問は、「営業所等の設置について指定管理期間の始期までに設置できる団体と記載されております。例えば、指定管理施設内の一区画を営業所として使用させていただくことは可能でしょうか」。質問者がシダックスかどうかは明瞭ではないが、このときの応募は3団体で、うち2つは高知市内の企業・団体だったことはわかっている。質問の文脈から質問者はシダックスだったであろうことが推測される。

質問に対し、高知市の回答(回答12のこと)はこうだった。

「高知市立龍馬の生まれたまち記念館の指定管理に係る業務を目的とする場合のみ、設置可能です。ただし、市議会の議決による指定管理者の指定後、基本協定の締結や事務引継ぎ等がございますので、早めにご対応いただけますようご協力をお願いします。また、本市に営業所設置後、確認のため定款や登記事項証明書等、挙証資料の提供を求める場合がございます」

「龍馬の生まれたまち記念館」に営業所を置くという発想に、高知市がOKを出していたことになる。ただし高知市のこの回答には幾つかのおかしさがある。たとえば「早めにご対応いただけますようご協力を」というくだりである。文脈から「ご対応」が営業所設置だと分かるが、「早めに」とはどういうことだろう。2022年3月31日までは入交住環境株式会社(高知市)が「龍馬の生まれたまち記念館」の指定管理を担っていた。質問者が指定管理を始めるのは2022年4月1日だから、営業所を置くのはそれ以降。事実としてそれがありながら「早めにご対応」とは意味が分からない。念を入れると「早めに」が4月以降ということはあり得ない。なにより高知市の回答からそれが分かる。「早め」にしてほしい理由として、「基本協定の締結や事務引継ぎ等」と明記されているのである。当然ながらそれらは指定管理が始まる前に完了しておく必要がある。

質問で「指定管理期間の始期までに設置できる団体と記載されております」と書いているのだから、その団体が高知市に本社や営業所を持っていないことも分かる。ということは「指定管理期間の始期まで」に営業所を作らないといけない。いや、高知市は「基本協定の締結や事務引継ぎ等」があることを理由にもっと早く営業所を作るように求めている。となると「龍馬の生まれたまち記念館」に作れるはずがない。2022年3月31日までは入交住環境株式会社が指定管理をしているのだから、「(自社が受託した)指定管理施設内の一区画」に営業所を作り得るわけがないのだ。と考えていくと、高知市の回答は支離滅裂に近い。

「回答15」の質問(左)と回答

シダックス本社ですら高知営業所を知らない?

すでに書いたが、シダックスのホームページには高知営業所は載っていない。高知市議会議員がシダックス本社に問い合わせたとき、「高知営業所はありません」と言われている。「龍馬の生まれたまち記念館」に営業所を作ったというシダックスや高知市の見解と整合性が取れないのだが…。シダックスの回答はこうだった。

「当社の規定する『営業所』としてホームページ(HP)などに記載するのは、複数の自治体を所管している事業所となります。今回の高知市のように、高知市のみ担当する事業所は、HP と組織図記載はありませんので問い合わせを受けた電話応対者が知らず、そのように答えた可能性があります」

小さな営業所はHPにも組織図にも載せていない、だから本社では知らない人が少なくないということだろう。シダックス本社ですら知られていないのだから、シダックスに高知営業所があったことを高知市民が知るすべはない。唯一、知っていたのは高知市役所の幹部と担当課だけかもしれない。

「龍馬の生まれたまち記念館」の展示から

「日本語解釈、法規上 4 1 日は含まれる」

設置場所以上に重要な問題は、営業所を「指定管理期間の始期まで」に作る必要があることだった。「始期」は2022年4月1日午前零時である。それまでに営業所を作らないと応募資格違反で失格するのだが、すでに書いたようにシダックスは2022年4月1日付で営業所を作ることを高知市に事前通告している。つまり「始期まで」に4月1日が含まれるという解釈を立て、その日に営業所を作ると通知した。高知市はこれを追認する。問題が発覚した2023年12月議会で、高知市は「『始期まで』に4月1日が含まれる」という見解を繰り返した。

シダックス広報室からの回答文ではこの問題はこう書かれている。

「日本語解釈、法規上 4 月 1 日は含まれると認識しています」

この問題は極めて重要なので、のちにじっくりと触れることにする。

 

(C)News Kochi(ニュース高知)

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